羊男のモンタージュ

写真と、ラグビーと、ニュージーランドと。

Behind the Curve を観た

www.imdb.com

Netflixで公開されているドキュメント映画「Behind the Curve」を観ました。

先日ラジオクラウドで聞いた「アフター6ジャンクション」という番組で紹介されていた映画で、地球は平らだという「地球平面説」を唱える人々とそのコミュニティーの様子を追ったドキュメンタリー映画です。

は?地球が平って、今の時代にそんなこと言っている人いるの?と思ったあなた。いるんです。しかも世界中にたくさん。

だってちゃんと学校で習ったでしょ?と思ったあなた。地球平面説を信じるビリーバーの方々によれば、それは何者かの陰謀で、そう信じ込まされているだけなですって。

細かい部分は是非この映画を観ていただきたいのですが、このコミュニティーの中心人物のひとりであるマーク・サージェント氏は地球平面説の説明をするビデオ(Youtubeで公開されているらしい)で「(地球が丸くないと思う)ひとつのきっかけに、南半球のどこからも直行便が飛んでいないということがあった」と言っています。世界中の飛行機の飛行状況が確認できるサイトがありますが、それを見ていたが見つからなかったそうです。
はい?ニュージーランド航空やカンタス航空は日本やらアメリカやら、北半球の各国に直行便を飛ばしてますが?南半球なめんなよ!

実は私、この手のエセ科学が好き(信じているというわけではなくて、何言っちゃってんのと思いながらその説を見るのが好き)で、ずいぶんと昔にエセ科学について書かれた名著マーティン・ガードナーの「奇妙な論理」も読みました。

 

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

 

 

奇妙な論理〈2〉なぜニセ科学に惹かれるのか (ハヤカワ文庫NF)

奇妙な論理〈2〉なぜニセ科学に惹かれるのか (ハヤカワ文庫NF)

 

 この本の中で、この手のエセ科学者の傾向として、次の5つが挙げられています。

(1) 彼は自分を天才と考える。
(2) 彼は自分の仲間たちを、例外なしに無学な愚か者とみなす。
<中略>
(3) 彼は自分が不当に迫害され、差別待遇を受けていると信じる。
<中略>
(4) 彼は最も偉大な科学者や最もよく確率された理論に攻撃を集中する強い衝動をもっている。
<中略>
(5) 彼はしばしば複雑な特殊用語を使って書く傾向がある。 

 この映画で取り上げられている人々は、エセ科学を唱える”科学者”ではなく、それを信じるビリーバーたちということもあり、上記の要件すべてに当てはまるということではありませんが、「地球平面説」を信じない人たちはだまされている、本当のことに気が付かないという思考は(2)の傾向を示しているし、(彼らにとっての)本当のことが隠されているのは陰謀であるという陰謀によって自分たちが虐げられていると考える思考は(3)の傾向と言えるでしょう。

また、この映画の中で確かサイエンスライターの方が指摘していましたが、こうしたエセ科学を信じる人は自分の都合のよい情報だけを集めるというのがあります。映画の中でビリーバーが自分たちの理論が正しいことを証明するために行う実験の様子がまさにそれで、通常の科学者であれば、立てた仮設に対して実験結果が合わない場合、仮設が正しくなかったと考えるのですが、ビリーバーはあくまで実験は仮設(ではなく彼らの中では結論なので)に合わないのは実験がよくないからだ、違う方法で実験すれば仮設を証明できるはずだ、という本末転倒な考え方をするのです。

「地球が平らだ!」と主張したって別に誰に迷惑がかかるわけでもないし、言わせておけばいいんじゃないの?という考え方もあるかもしれません。しかし、そうしたエセ科学を信じる人が増えていき、上で引用したような考え方の人が増えていくことは、本当に迷惑がかからないことなのでしょうか?

何を馬鹿なことを言っているだよと思って半笑いで観ているうちに、本当に笑っていていいことなんだろうか?と、なんとも不安になる映画です。

エセ科学解説本にはこんなものもあります。興味を持った方は是非。

 

人はなぜエセ科学に騙されるのか〈上〉 (新潮文庫)

人はなぜエセ科学に騙されるのか〈上〉 (新潮文庫)

 

 

人はなぜエセ科学に騙されるのか〈下〉 (新潮文庫)

人はなぜエセ科学に騙されるのか〈下〉 (新潮文庫)